文章力の欠如ゆえ、前回のブログに記した北米ツアーとオリンピックにおけるロジャー・ダルトリーの役割が伝わっていなかったかもしれない。これらはすべて元々ロジャーの仕事だ、というのをちゃんと記しておかなかったためであろう。
ザ・フーとしては4年ぶりのツアーで、ソロツアーを続けてきたロジャー・ダルトリーの方がピート・タウンゼントより場数を踏んでいるから今回の仕切りを任されている、というわけではない。
ピートは優れた作詞・作曲家であり、舞台の上でも一際輝いているのは間違いないが、その才能を発揮する屋台骨を設計するのも、ロジャーの仕事なのである。
あまり知られていないかもしれないが、ザ・フーのセットリスト、つまり「ショーの流れ」を決めるのはロジャーだ。
では、「なぜロジャーが決めるのか」だが、ロジャー本人とピートの見解は異なるものの、ここではピートの線に沿って「歌うのはロジャーだから」と言っておこう。前回のワールドツアーで、2006年には『エンドレス・ワイヤー』からのミニオペラがセットリストに入っていたのが次第に少なくなったのは記憶に新しい(といっても6年も前だ)が、これもライブで歌うには苦しいことが理由のひとつであったと聞いている。実際、エンドレス・ワイヤーの中でも特にレイチェルとの共作『イッツ・ナット・イナフ』が声帯に負担を与えるとその後のインタビューでロジャーは答えている。少しばかり鍵盤楽器を演奏する者として推測すると、キーボードで作曲すると、容易に出せる音であっても、実際に声に出して歌うには無理が生じる場合がある。(音域が急変しても鍵盤だと簡単に出せる)この曲もそのケースではないだろうか。
ロジャーのセットリストの決め方はとても彼らしい。楽譜(ギターのタブ譜ではなく、いわゆる五線譜)をイメージして欲しい。ひとつのショーをひとつの曲として捉え、そこに拍子、フレーズといった位置づけで、ひとつひとつの曲を当てはめるのだ。
コンサート会場の彼の舞台での立ち位置からだと、さながら会場の端までが一続きの曲になり、座席の列やブロックがスラーで綴られ、観客ひとりひとりが音符にも例えられるのはないかと思うが、どうやらそれも違うようだ。ロジャーは常に客席からの視点で進行を見据えているらしい。
ロジャーがフランクを気に入っている理由のひとつは、フランクが舞台の熱狂に陶酔せず、観客席からの視点に立てるからだという。音楽監督としての彼に全体の引き締めを任せることで、舞台上の自分が演じる役に集中できるのだろう。
さて、今回の『四重人格』ツアーだが、フランク・サイムズはギターを弾かないという話が入って来た。自身のバンド、TopCat他の映像を探しても、キーボードを演奏している姿が見当たらない。ということは、かなり先端の録音機材を用いたライブ編成も考えられる。
ラビット不在については、健康上の理由ではないということだ。色々な噂はあるものの、先日の記者会見でピートも「俺たちには選択肢があるし、現在一緒にやるメンバーは素晴らしい」と言っていたこと、そしてロジャーが以前「ザ・フーの本質はピートと俺だ。それについては何の弁明もしない」とインタビューで答えていたことに触れておこう。
そしていよいよ差し迫ってきたオリンピックだが、日本では一般に『ババ・オライリー』等のCSIの一連のヒットメドレーや、『シー・ミー・フィール・ミー』の組み合わせと予想されているようだ。
しかし、先日の記者会見やオリンピック委員会の「50年の英国音楽史」という発表を考えると、『ブリティッシュ・ロック・シンフォニー』のようなアレンジで、マイ・ジェネレーション一曲をロジャーがロンドン交響楽団と録音し、他の「イギリスを代表する音楽」と共にメドレーのようにして使われるのかもしれないと思う。
世代によっても違うが、イギリス人の捉えるザ・フーの一般的イメージは「60年代のバンド」である。戦後のスウィンギング・シックスティーズ、華やかで革新的な時代の幕開けとなったのは、他でもない、このヨーロッパの島国「大英帝国」である、というイギリスの自負を引っさげ、見事に体現されるバンド、それがザ・フーである。
(余計な一言を付け加えれば、オリンピックでモッドにスポットライトが当たれば、アメリカでも『四重人格』ツアーが視覚的に更に受け入れられやすくなるだろう)
開会式及び閉会式に使われた音楽はiTunesやCDでも発売される。
http://itunes.apple.com/jp/preorder/symphony-british-music-music/id546043769
前回のブログについて、facebookでもコメント欄に興味深いコメントを付けて頂いたので、濃いフー・フレンドの方はfacebokのウォールを遡って読んで下さると嬉しいです。
資料:Classic Rock、thewho.com音声インタビュー他
